先日、といっても昨年になりますが、徳島県鳴門市の大塚国際美術館に行ってきました。
このブログでも過去に何度か記事にしていますが、訪問するのは数年ぶり4度目だったでしょうか。
世界の名作絵画を原寸大の陶板画で展示するこの美術館、コロナ禍で数年足が遠のいている間に館内も細かく変化しているようで、私自身の趣味として最も嬉しい変化だったのが2階の現代展示のフロアに置かれた名作椅子の数々。
以前訪れた時には無かったこれらの椅子ですが、特に作品名や解説がある訳でもなく、普通に休憩用として座る事ができるという、名作椅子ファンにとってはとても嬉しい空間になっていました。
そんな、大塚国際美術館で出会った名作椅子(と、一部インテリア)の数々を順不同で紹介していくと共に、コミックの各表紙に名作椅子が掲載されている漫画SPY×FAMILYでの取り上げ方についても書いていこうと思います
- パントンチェア/ヴァーナー・パントン
- ヒルハウスチェア/チャールズ・レニー・マッキントッシュ
- LC1スリングチェア/ル・コルビジェ
- バルセロナチェア/ミース・ファン・デル・ローエ
- アームシェルチェア/イームズ
- ボールチェア/エーロ・アールニオ
- ボッカソファ/スタジオ65
- エッグチェア/アルネ・ヤコブセン
- タリアセン2/フランク・ロイド・ライト
- さいごに
パントンチェア/ヴァーナー・パントン
デンマークのデザイナー、ヴァーナー・パントンの作で、世界初のプラスチック一体成型で作られた椅子。
私がデザイナーズチェア好きになった原点かもしれません
大阪の谷町六丁目の某レストランに通っていた頃、駅からの道中にこれが置いてあるお店があって、いつも外から眺めていた思い出があります。
今ストリートビューで見てみたら、まだ置いてある様子。
https://maps.app.goo.gl/Di6y4CaoGAr8ASCA9
SPY×FAMILYでは表紙への登場は現時点でありませんが、6巻表紙のハートコーンチェアはこの椅子と同じパントン作品になります
ヒルハウスチェア/チャールズ・レニー・マッキントッシュ
スコットランドのデザイナー、チャールズ・レニー・マッキントッシュによる作。
建築家でもあった彼がヒルハウスという住宅を設計した時に、そこに置くために設計したとされています。
座るためだけではなく、インテリアとして眺めるための物としてもデザインされたからなのか、実際に座ってみた私の子供曰く座り心地はあまり良くなかったという率直な感想をいただきました(苦笑)
SPY×FAMILYではコミックス11巻の表紙に描かれていますが、同作7巻表紙には同じマッキントッシュ作のウィロー,1チェアに座るダミアンが描かれており、11巻のヒルハウス2脚にダミアンの取り巻きというか家来であるエミールとユーインそれぞれが座るという関係性も表現されています
LC1スリングチェア/ル・コルビジェ
フランス(生まれはスイス)の建築家・デザイナーであるル・コルビジェの作。
コルビジェは日本では国立西洋美術館を設計しましたが、この国立西洋美術館を含め彼の建築の内世界中の17件がル・コルビジェの建築作品として世界遺産に登録されたのも記憶に新しいところ。
また、日本の建築家では前川國男・吉阪隆正・坂倉準三の3人がコルビジェに師事し、更にその弟子筋を辿れば丹下健三・磯崎新・谷口吉生・大谷幸夫・柳宗理・・・と錚々たる顔ぶれ並びますが、この辺の話はキリがないので今回は割愛。
さて、このコルビジェがデザインした椅子にはLC1、LC2、LC3・・・とナンバリングがされているのですが、一番有名なのはやはりLC2でしょうか。
SPY×FAMILYコミックでも1巻の表紙に描かれていましたが、このLC1も実際に座ってみるとスリングチェアなだけあってなかなかの座り心地でした。
そしてこのLC1の置かれた場所の壁面には、同じコルビジェの絵画も展示してありました。
バルセロナチェア/ミース・ファン・デル・ローエ
ドイツの建築家ファン・デル・ローエのデザインしたこちらは、彼が設計した1929年バルセロナ万博のドイツ館に設置する為に作られたもの。
特徴的な脚のデザインと深く沈み込むように座れる座面が特徴的で、SPY×FAMILYコミックでは5巻の表紙に描かれています
アームシェルチェア/イームズ
泣く子も黙る、説明不要のイームズのアームシェルチェア。脚もやっぱりこのウッドベースが似合いますね。まあロッカーベースも捨てがたい訳ですが*1。
自宅にもこんな風に5色並べて置きたいものです。そんなスペース無いけど。
ちなみにこのアームシェルチェアはSPY×FAMILYコミックには登場していませんが、同じイームズのデザインしたものとして、ラ・シェーズが3巻表紙に、ラウンジチェア&オットマンが8巻表紙に。
また、アニメ(1期)エンディングではワイヤーチェアDKRや、ウォルナットスツール、イームズエレファントも確認できます。
ボールチェア/エーロ・アールニオ
フィンランドのデザイナー、エーロ・アールニオによる一目見たら忘れられないそのデザイン・存在感。
何故写真が後ろからかといえば、ずっと人が座っていたからですね。
休憩用の椅子として置いてあるので仕方ないのですが、ずっと座ってスマホを弄られておりましたね。
・・・座ってみたかったなぁ。
ちなみに写真奥には同じくボールチェアSessele Eyeがチラッと見えますが、こちらは座面が回転する仕組みの為、少年が座ってずっとぐるんぐるん回っていました(汗)。
SPY×FAMILYでは4巻表紙でボンドが座っています
ここからは人が座ってたりして写真が撮れなかった椅子たち。
休憩用として置いてあるので仕方が無い
ボッカソファ/スタジオ65
元々サルバドール・ダリがアメリカの女優メイ・ウエストの唇から着想を得て作ったリップソファという唇の形をしたソファがあって、そのアイデアをベースにイタリアのデザイン集団スタジオ65がマリリンモンローの唇をイメージして作ったとされるボッカソファは、アンディ・ウォーホルによるマリリンモンローの絵の場所に設置されていました
エッグチェア/アルネ・ヤコブセン
デンマークの建築家、ヤコブセンによる不朽の名作。
SPY×FAMILYアニメ1期のエンディングで同じヤコブセンのセブンチェアとスワンチェアが登場しています
タリアセン2/フランク・ロイド・ライト
椅子ではないですが、この照明も有名な作品。
今週末まで東京で、その前は豊田市で大規模な展覧会が行われていた(そしてこの後青森に巡回)アメリカの建築家フランク・ロイド・ライト。
日本では帝国ホテルの建築に携わっていた事で有名ですが、彼が劇場を作った際に設計した照明。
ちなみにライトは先に紹介したコルビジェ、ファン・デル・ローエと共に近代建築の三大巨匠などとも言われます
さいごに
簡単に「休憩用として」置かれていた椅子を紹介してきましたが、名作椅子の、それもかなり有名なところをこんなに気軽に座って楽しめるなんて、思いがけない体験でした。
国内では椅子の展示が有名な美術館として富山県美術館や埼玉県立近代美術館、そして北海道東川町の織田コレクションというのもありますし、丁度今日本橋高島屋(その後大阪・名古屋に巡回)では椅子とめぐる20世紀のデザイン展というのもやっていますが、関西から比較的気軽に行ける場所にこんなに椅子を沢山愛でる事ができる施設があるのは嬉しいですね
*1:個人的嗜好です