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京都で彷徨っている

惜別・西武大津店

西武大津店が閉店した。

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私が生まれる前、父の家族は大津に住んでいて親戚も大津に多かったので、私が生まれてからも百貨店に行くとなれば京都市内の大丸や高島屋より大津の西武に行く事が多かった*1


当時は週末になれば周辺の道路も渋滞して本館併設の駐車場はいつも満車。
毎回連絡通路で結ばれた別館の駐車場に車を停めていた事を思い出す。

 

別館駐車場と本館を結ぶ連絡通路では、何故か訪れるたびに珍味の販売会をやっていたような記憶がある。
塩辛やスルメのしょっぱい匂いを潜り抜けて買物に向かう。
私が西武大津店を思うとき、真っ先に思い浮かぶのがあの珍味の香りなのだ。

 

親がお中元、お歳暮の品定めに行くのに連れて行っってもらった事もあるし、イベントホールで毎年のように開催されていた駅弁大会に行った記憶もある。

 

買い物が済むと、お楽しみはレストランでの食事。
6階7階がレストラン街で、そういえば祖父に連れられカウンターで寿司を板前さんに注文して食べるという体験を初めてしたのもここだった*2


正直その寿司屋以外は、何処でどんな料理を食べたかという記憶はあまり残っていないけれど、それよりも強烈な印象に残っているのはやはりバードパラダイス。

 

吹き抜けの1角に2フロアをぶち抜いて作られたガラス張りの中に、色んな鳥が放し飼いにされていた。

百貨店の中で鳥が飼われているというなんとも異空間な感じは今でも忘れられない。

 

広々とした吹き抜け空間を上から見下ろせる構造は、百貨店としては時代の先を行くデザインだったんではないかなと思う。

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正面の緑の三角形の部分に南国風の植栽があって鳥がいた

 

デザインといえばその外観にも触れないわけにはいかない。
設計したのは菊竹清訓氏。


あまり建築については詳しくないので調べてみたところ、私が知っている建物だとエキスポタワーやパシフィックホテル茅ヶ崎などが氏の設計だそう。

エキスポタワーは茨木にあった親戚宅のベランダからその異様な風貌をよく眺めていたし、パシフィックホテル茅ヶ崎といえば私が大好きなサザンオールスターズの曲・ホテルパシフィックのモデルとなった場所。

この2つの建物は同じ建築家が設計したと言われれば、確かになるほどと気がつく意匠であると思う。

 

他にも、昨年訪れた静岡県長泉町にあるクレマチスの丘にある井上靖記念館ベルナール・ビュフェ美術館も氏の作品だと聞くと、俄然訪れたくもなる。

 

閉店後は取り壊されて跡地はマンションになる予定だそうで、あの特徴的な外階段も見納めと思うとカメラを向けずにはいられなかった。

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成人してからは、地元京都のふたば書房がお洒落で意欲的な店舗を出店したので本を買いに行ったり、改装されて子供用品をメインに据えたフロアで買い物をしつつ巨大遊具で子供を遊ばせたりもした。
そう思うと、我が家は祖父母の代から子供まで4世代に渡ってお世話になったという事になる。

 

寂しいけれど、こういうものは栄枯盛衰で流行りがあれば廃れる時も来る。

正直跡地はマンションになるし、隣にあった大津パルコの跡もまったく魅力のないショッピングセンターになってしまったので当分このあたりに用事は無くなると思うけれど、この前の道は頻繁に通るし、すぐ近くの湖岸を散策する事もよくあるので、西武大津店の思い出は私の中で風化する事はないんだろうなと思っている

 

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*1:伊勢丹は当時まだ無かった

*2:名前もまだ覚えている。寿司田といった。まだチェーン店として各地にあるらしい